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本にまつわるちょっとした記憶

基本的に自分は本を読まない。

小学生の頃なんか、学校の図書館の利用履歴が夏休みの読書感想文用に借りたものだけだったし、その後も気まぐれで雰囲気が気に入った小説を買っては放置してを繰り返してたくらい。

金原ひとみとか、本多孝好とか、何となく波長が合うなと思った人のくらいかな。ちゃんと読んだの。


昔付き合ってた女の子がいて、ちょっとしたきっかけがありその子の友達とも仲良くなった。

言葉に力がある人だった。単なる日記であっても、詩のような言葉でも、読んでいてとても揺さぶられるものがあった。あの人みたいにちょっとした一言で余韻を残すことは、自分にはこの先ずっとできない気がする。


その人からある年誕生日プレゼントをもらった。その時の流れはうろ覚えなのだけど、うちに手紙が送られてきて、その手紙の暗号を読み解くと最寄りの郵便局にたどり着いて、そこで局留めの誕生日プレゼントを受け取ったんだと思う。

中に入っていたのはお香と、山田詠美の「姫君」。

お礼の連絡をしたら「きっと君は気に入ると思うから」と言われた。


多分その人が言うのなら間違いないんだろうと思った。そのくらいその人には何でも見通されてると思っていた。

でも俺は本を読まない人間なので、そのまま放置してるうちに当時の彼女とも別れ、その人とも音信不通になってしまった。


そんなことがあったのを思い出したのは、眼科に行く時に待ち時間を潰すのにたまには本でも持っていこうと思って何となく手に取ったからだった。

短編の最初の話を読んだところで終わったのだけど、すごく読むのにエネルギーが必要な小説だった。

毒とか、情念とか、愛情への執着とか、歪んだものの見方とか、文章の温度の低さとは真逆の濃さを含んでいて、何となくあの人っぽいなと思ったりして。


本でも音楽でも、やはり勧められた時に体験するべきだ。今の心の鈍った自分が読んでも響くのだから、当時の不安定だった自分が読んでいたらどんな影響を受けたのだろうと思うとゾクゾクする。


今の俺だったら何を勧めてくれるんだろう、と一瞬思ったけれど、多分今の俺に見繕う本はあまり面白くないんだろうなと考えてしまった。